和歌山県
みなべ町/田辺市

ズバイ体験記

シーズンワーク

はじめに

2023年11月中旬〜12月上旬、みなべ町清川地区にてズバイ生産に従事しました。本記事では、JA規格のズバイ生産の実際を報告します。

【筆者の紹介】

30代後半、女性、元金融専門職、農業アルバイト歴4ヶ月、趣味は登山とバイクツーリング、体力普通。会社員時代は調査・企画畑。考えることは得意だが、単純作業スキルは大したことない。ズバイ生産に関しては、2022年に枝加工のみ少々経験あり。


ズバイとは

「ズバイ」という商品は一般には馴染みが無いと思うので、まずはどのようなものか説明します。ズバイとは、梅の細くて真っ直ぐな若い枝のこと。主な用途はお正月飾りの花材。門松につけたり、お正月に飾るいけばなに添えたり、門梅(かどうめ)に加工する等の使い道があります。

ズバイは、梅の剪定作業で切った枝の中から、商品価値のある枝(綺麗で真っ直ぐなど規格を満たすもの)を選別、加工して生産されます。


アグリナジカンでズバイ生産を行う際のルール

今回、以下のルールで生産に従事しました。

◆完全出来高制⇩

ズバイを出荷した分だけ報酬を受け取る、完全出来高制のお仕事です。

◆ズバイの作業報酬は相場変動制⇩

今回、ズバイの出荷先はJAのため、JAの売却単価を使って報酬を決めました。JAは市場でズバイを売却するため、売却単価は相場変動により上下します。

◆道具貸与あり⇩

生産に使う道具一式は借りられます。今回は無償でした。

◆枝を拾う梅畑の紹介あり⇩

梅の枝を拾う場所はアグリナジカンの紹介を受けることができます。現状、無償で枝拾い可能。

◆滞在費は自費

滞在先が必要な場合、アグリナジカンがシェアハウスを手配しますが、滞在費は自分で支払う必要があります。

注:スキームの詳細は今後変更の可能性があります。


ズバイ生産の活動内容

ズバイ生産の流れを順を追って説明します。

下準備(資材集め、道具作成)→枝拾い→出荷準備→出荷→後片付けの流れで作業を進めます。


1下準備

一般の農業アルバイトと異なる点として、アグリナジカンでズバイの生産に従事すると、段取りや道具集めなどの周辺作業も自分で行います。

【A 資材集め】

枝拾い、枝の保管、出荷で使う資材を集めます。

  • 枝拾い用品:コンテナ、剪定ばさみ、ベルト、防寒テムレス、軍手、巻き尺
  • 出荷作業用品:スライド丸のこ、六角レンチ、延長コード、作業台、枝カット補助道具、バケツ、タオル、ほうき、ちりとり、輪ゴム、出荷用ダンボール箱、出荷伝票
  • 大工道具:かなづち、のこぎり
  • 保管用品:水を張る桶、紐


【B 枝カット補助道具作成】

ズバイ出荷時、JA規格では枝を40cmに切り揃えます。今回、切断にスライド丸のこを使用したのですが、そのままでは枝を切断できないため、補助トレイを自作しました。

(写真左手前側、今回自作した枝カット補助トレイです。)

2枝拾い

ズバイの原材料となる枝を拾い集めます。アグリナジカンと付き合いのある近隣農家に許可をとり、梅畑で売り物になりそうな枝を拾います。

実働6~7時間拾うと、800〜1,000本程度回収可能。

(畑で拾った枝。この日はたくさん拾いました。)

枝拾いを行う際、残った不要な枝は農園指定の方法で片付けます。各農園でやり方が異なるので、園主さんに置き場所や枝のまとめ方をヒアリングします。

帰宅後、水を張った桶に枝をつけて保管します。

(保管中の枝。持ち帰った枝は水につけ、定期的に水を交換します。

3出荷準備

出荷日の1~2日前から、出荷準備にかかります。JAのズバイ集荷は午前中のため、出荷当日に枝の加工から作業すると間に合いません。出荷日前日までに加工を済ませ、出荷当日は箱詰めのみを行います。

まず、出荷日の1~2日前に、枝の加工を行います。枝の選別、裁断、結束の順に処理します。

  • 選別:JAの規格に沿い、枝の状態を目視確認して仕分けします。先端に芽がついているか、病斑の有無、傷の有無などをチェック。
  • 裁断:40センチに切断。スライド丸のこを使って数十本一気にカット。
  • 結束:枝を50本ずつ結束します。輪ゴムで縛ると簡単。

枝加工作業コーナー。机、コンテナなどあるものを駆使して作業場を作りました。

加工した枝の束は、水に浸して出荷日まで保管します。

写真中央、短いものが加工済みのズバイ。1コンテナあたり最大40束入りますが、限界まで詰めると非常に重く、持ち上げる際に苦労します。

出荷日当日、枝の束を箱詰めします。

枝の束を桶から取り出し、水をよく切って出荷用ダンボール箱に詰めます。

1箱10束=500本入。

4出荷

JA指定の集荷場所に、箱詰めしたズバイを持参。みなべ町だと、街中の統合選果場、山奥の清川支所のいずれかに持ち込みます。集荷会場に到着すると、係員が猛烈なスピードで枝入り段ボール箱を回収してくれます。出荷伝票を係員に提示し、確認を受けたら出荷完了。

(JA清川支所の集荷会場)

売上代金は後日後払いです。

5)後片付け

出荷作業が終わったら、作業場所や機材の清掃、借りた道具の返却、切れ端の枝の処分を行います。枝の裁断作業では大量のおがくずが発生するので、作業場所周辺やスライド丸のこの掃除を行います。

作業後はそこいらじゅう粉だらけで、後始末が大変でした。切れ端の枝は山に捨てるか燃やして処分します。今回は山下家の裏山で焼却処分しました。

(片付けを終え、ランチタイムのひとコマ。)

この日はのじゃさんが助っ人に来てくれました。


活動実績と売上

活動日程や気になる売上を紹介します。

【活動スケジュール】

2023年11月17日〜12月8日にかけて、枝拾いやズバイ出荷を行いました。

ズバイの推奨保管期限は14日です。2023年の初回出荷日は12/1だったので、2週間前の11/17から枝を拾い始めました。

JAのズバイ出荷日は12月上旬の1週間程度に集中的に設定されています。2023年は12/1~12/8に4回設定されており、筆者は3回に分けて出荷しました。

【作業時間】

枝拾い:64.5時間

その他作業:51.5時間(下準備、出荷、後片付けに要した時間)

合計:116時間

枝拾いは1日あたり3~6時間程度、毎日必死に拾った訳ではなく、長期戦なので無理せずぼちぼち拾いました。その他の作業は、枝の加工日は1日8時間ほど必死に作業しましたが、その他付随作業は日を分けてすこしずつ行いました。

注:上記作業時間は、手を動かす「作業」に要した時間で、頭を使う「企画」(作業の段取りをする、枝カット補助道具を設計する、作業効率改善手法を考える等)に要した時間は含みません。

【出荷数量と売上】

出荷数量は22箱2束=11,100本のズバイを出荷。2023年はズバイの相場が強く、1本あたり12.5円程度で売れ、売上は138,941円也。

例年よりズバイが高く売れたので(例年だとズバイ1本10円前後)、田舎のフツーのアルバイト並には売上を立てることができました。


感想

2022年にズバイ加工経験が少々あり(枝裁断・結束を実施)、当時の記憶から「ズバイは手間がかかり過ぎて儲けるのは難しい」との印象がありました。今回、ズバイの儲からなさを検証すべくズバイ生産の全工程に取り組んでみました。

事前予想とは裏腹に、2023年は相場が強く想定外に儲かってびっくり。相場が悪いと最低賃金のアルバイトに惨敗する売上水準に終わる可能性もあったのですが、2023年は強い相場の追い風もあり、田舎のフツーのアルバイト並の売上を達成。Bull Market万歳!!

ズバイ生産では工夫次第で作業効率が劇的に改善することもあり、創意工夫の時間を楽しめました。例えば、初回のズバイ加工日は日の出から日没まで実働9時間必死にやって80束しか処理できなかったのですが、枝拾いから枝カット作業まで全面的に見直しと改善を行った結果、2回目のズバイ加工日は6時間で80束処理完了。こんなに早く終わっていいのか!?と感じるレベルまで改善でき、やりがいを感じられました。


written by みかちゅう

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